札幌市のダイエット・ボディメイク専門のパーソナルトレーニングジム アンカーフィットの小林大祐です。

今回は、何となく悪者扱いされがちな印象の『静的ストレッチ』と、やたらと優等生扱いな印象を受ける『動的ストレッチ』。

この二つについて、私なりの考えをまとめていきます。

お時間とご興味のある方は、是非最後までお付き合いください。

静的ストレッチVS動的ストレッチ

では早速、今回のテーマに対する結論から述べていきますが、結論「静的ストレッチは全然良いヤツだし、普段から相当助けられてますよ!」と言うのが今回の結論になります。

いやいや、考えが古いのでは??と思われた方も少なからずおられるかと思いますので、ここからは、その理由について解説していきます。

まず大前提として、今回はアスリートではなく、一般の方向けの『ダイエットやボディメイク時のトレーニングにおけるストレッチ』として解説していきます。

では今回の主役、『静的ストレッチ』と『動的ストレッチ』について簡単に区別していきましょう。

静的ストレッチ

静的(スタティック)ストレッチとは、恐らく皆さんが「ストレッチ」と聞いてイメージする、その場で筋肉をじわ~っと伸ばすタイプのストレッチで、特徴としては、対象とする筋肉の最大可動域付近で勢いをつけずに伸ばし続けます。

この際、力のかけ方としては、主に自体重、又は外的な力を用いて筋肉を伸ばすといった特徴があります。

例)
①止まった状態で脚を前後に大きく広げ、後ろ脚のアキレス腱を伸ばす。(自体重を利用)
②長座体前屈で背中を押してもらい、もも裏からふくらはぎにかけての筋肉を伸ばす。(外力を利用)

動的ストレッチ

対して、動的(ダイナミック)ストレッチとは、動きの中で筋肉を伸ばすタイプのストレッチで、特徴としては、最大可動域付近で伸ばし続けると言うよりは、反動や多少勢いをつけながら、対象とする筋肉の可動域を広げていきます。

この際、力のかけ方としては、自身の筋力を用いて対象の筋肉を伸ばすといった特徴があります。

例)
①脚を前後に大きく広げながら歩き、後ろ脚のアキレス腱を伸ばす。
②片方の脚を伸ばした状態で高く蹴り上げ、もも裏からふくらはぎにかけての筋肉を伸ばす。

かなりざっくりしてますが、以上が両者の違いになります。

運動前のストレッチについて

そんな『静的ストレッチ』と『動的ストレッチ』ですが、実際の指導現場でもお客様からよく聞かれるのが「運動前のストレッチって良くないんですよねぇ~?(ジェスター的に恐らくイメージしているのは静的ストレッチ)」であったり、それなりに運動経験やトレーニング経験のある方からは「運動前にやるなら動的ストレッチの方が良いんですよねぇ~?」と言った質問です。

もしかしたら、こちらのブログを読んでいただいている方の中にも、同じように思っている方が、多少なりともいるのではないかと思います。

ではなぜ、こんなにも『静的ストレッチ』に対してネガティブな印象を抱かれるようになったのか…。

それは恐らく『静的ストレッチ』により筋力が低下するといったデータがたくさん存在していること、尚且つそのデータについて、至る所で取りあげられているのが原因…ではないかと考えます。

しっかりと行う事ができれば、本来皆さんが『静的ストレッチ』を行う1番の目的であろう、関節可動域の向上という効果はもたらされるのですが、それ以上に”筋力低下”と言うマイナスのイメージが先走ってしまったように感じてしまいます。

一方、優等生扱いの『動的ストレッチ』はというと、筋肉は伸ばされ関節可動域もしっかりと向上し、尚且つ筋力の低下は起きないか、むしろ研究によっては向上すらしています。

それらを見ていると、『静的ストレッチ』が悪、『動的ストレッチ』が優秀、と言う評価に繋がるのも致し方ないかな…と言う気がしてしまいます。

がしかし、実際のところはどうなのか…。

ここからは私なりの考え、実際の指導経験を元に解説していきます。

まずトレーニング全般に言える事ですが、最も大切なのは”適切なフォームで行い、適切に筋肉を使う”という事です。

それを前提とした上で、場合によっては

①まずは関節可動域を広げて動きの制限を減らす
②そしてその関節可動域の範囲内で筋肉をしっかりと動かす

と言う流れが求められてきます。

その為には『動的ストレッチ』よりも『静的ストレッチ』の方が一役買っており、尚且つ『静的ストレッチ』で起こりうるマイナスな影響以上に、プラスな効果が上回っているな~、と言うの私自身の考えです。

では、なぜその様な考えに至ったかという部分について、実際の指導経験を元に解説していきます。

まず、私が普段トレーニング指導をするお客様の多くは10代~70代、その大半を占めているのは、運動不足か或いは運動経験の少ない男女(男性:4割/女性:6割)と言った感じで、基本的には運動が苦手な方が多い印象です。

更に言うと、姿勢不良や過体重が原因と思しき肩や首、そして膝や腰に対する痛みや不調を抱えている方が結構な割合を占めています。

その様な方々の中には『動的ストレッチ』で求めらる複合的な動きが既に難しいと感じてしまう方も少なくありません。

動きに気をとられ、どこの筋肉をストレッチしているかわからないまま行っている…とか。

また、『動的ストレッチ』によって伸ばそうとしている筋肉が伸びる前に、違うところに痛みや問題が出てしまう…と言った事もなんら珍しいことではありません。

ウォーキングランジの動きでアキレス腱を伸ばすつもりが、バランスが取れず中断…、アームサークル(肩回し運動)で肩周りの筋肉を温めようとするも、肩の痛みで中断…など。

以上のような事が、実際の指導現場ではちょくちょく起こっています。

もちろん、問題なくこなせる動きであれば積極的に行うのですが『動的ストレッチ』においては、この様な問題がとりわけ多い印象です。

こうした理由から、動きがシンプルで、多少違う動きをしていても「ここをもう少しだけこうして…」と言う様に修正を加えつつ、的確に関節可動域を広げやすい『静的ストレッチ』を積極的に取り入れております。

加えて私が普段大切にしていることは、ご自宅や自主トレで再現しやすいかどうかです。

定期的なパーソナルトレーニングだけではなく、日常的に習慣化していただく為にも、シンプルで取り組みやすい『静的ストレッチ』をご指導させていただく機会が多くあります。

とは言ってもここで無視できないのは、皆さんが恐れる『静的ストレッチ』によるマイナスの効果”筋力の低下”です。

これについては、実際に指導現場でも行う事の多い30秒程度の静的ストレッチによる筋力への影響を調べた研究をもとにお伝えしていきます。

(1)の研究では、年齢・身長・体重が近い健康な男子大学生11名を対象に、30秒間の静的及び動的ストレッチがもたらす脚伸展時の筋力への影響を試験しております。

試験方法は、股関節及び脚の曲げ伸ばし(屈曲・伸展)に関わる筋群に対し、

①『30秒間の静的ストレッチ』
→静的ストレッチ×5種類(左右で各30秒)
②『30秒間の動的ストレッチ』
→動的ストレッチ×5種類(左右で各30秒)
③『ストレッチをしない』

上記①~③のパターンで、脚伸展力測定システム用いてBefore・Afterの伸展力を測定した。

なお、測定にあっては5回試行し最も高い2つの値の平均値を各被験者の脚伸展力とした。

その結果、

①『30秒間の静的ストレッチ』では、
→統計的に有意な変化はなし。
②『30秒間の動的ストレッチ』では、
→統計的に有意な脚伸展力の向上を認めた。
③『ストレッチをしない』
→統計的に有意な変化はなし。

と言った結果が得られました。

つまり、30秒程度の静的ストレッチでは、”筋力が大幅に低下する”と言った問題は起きないと言うことになります。

但し、研究者達は、「ストレッチ→測定」までの間に30秒以上の間隔が空いた事も今回の結果に繋がった要因として否定できないと言う風に付け加えていますが、だとしても、トレーニングの質に悪影響を及ぼす程の大幅な”筋力低下”は起こらないのではないかと考えます。

そして『動的ストレッチ』さすがだな~となりますが『動的ストレッチ』のデメリットについては先程お伝えした通りですので、筋力が低下しないなら『静的ストレッチ』でも問題はない。と言う考えに繋がります。

となると次に『じゃあ30秒のストレッチってそもそも効果あるの??』と言う質問が寄せられそうですが、これについては(2)の研究で、

10秒→統計的に有意な筋緊張度の低下は認められず。
20秒→統計的に有意な筋緊張度の低下を認めた。
60秒→統計的に有意な筋緊張度の低下を認めた。
※20秒と60秒との効果の差についてはこの研究では明らかになっていない。

つまり、20~60秒のストレッチによって筋肉が十分にほぐれると言う結果が得られていることから、30秒の静的ストレッチによって筋肉は十分に伸ばされ、それに伴う関節可動域の向上も期待できると言う風に考えております。

また、時間に限りのあるパーソナルトレーニングの最中においても、各部位につき30秒程度の『静的ストレッチ』は適当かつ妥当ではないかと考えます。

ここまでの話を整理すると、一般の方に向けたダイエットやボディメイク時のストレッチとして…

・静的ストレッチは動的ストレッチよりも動きが単純で、対象の筋肉を的確に伸ばしやすい。
・静的ストレッチはどなたでも取り組みやすく、自宅での再現性も良い。
・何より、各部位30秒程度の静的ストレッチであれば大幅な筋力低下は起こらず、尚且つ十分な関節可動域の向上が期待できる為、その後のトレーニングに悪影響は及ぼさない。

と言うことになります。

以上の理由から、私にとって「静的ストレッチは全然良いヤツだし、普段から相当助けられてますよ!」と言う結論に至り、積極的に『静的ストレッチ』を実施する理由になります。

もちろんいくつかの研究によっては、『静的ストレッチ』による筋力の低下が証明されているものも存在します。

しかし、そういったものの中には、同じ筋肉に対し数種類のストレッチを30分近くかけて伸ばすと言った、あまり現実的ではないストレッチによるマイナス効果を述べているものも存在しております。

また、短時間の『静的ストレッチ→動的ストレッチ』を実施することにより、”関節可動域の向上”と”筋力の向上”という効果が得られることも研究で証明されております。(3)

運動初心者や運動が苦手と言う方に対してのトレーニング指導では、必要に応じ簡単な『静的ストレッチ』で関節可動域を向上させつつ、更に複雑な動きを伴う『動的ストレッチ』を実施するといった様に、両者の良い所と悪い所を組み合わせる事で、より安全で、効果的なトレーニング指導に繋がっていくと考えております。

是非今回の内容が少しでも皆さんのお役に立てることを期待しております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それではまた。

 

参考文献

(1)Effects of Static Stretching for 30 Seconds and Dynamic Stretching on LegExtension Power

(2)静的ストレッチングの効果的な持続時間について

(3)静的ストレッチングおよび動的ストレッチングの順序が筋力と関節可動域に及ぼす影響